不動産業界でDXを推進するメリットとは?業務効率化と顧客満足度向上の秘訣を解説
少子高齢化による労働人口減少への懸念や、コロナ禍の影響による働き方の変化などによって、多くの業界では、IT化やデジタル技術を駆使した「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が加速しています。そのような中、不動産業界ではDX導入の遅れをとっているのが現状です。
しかし、時代のニーズにあった業務効率化や顧客満足度向上のためにも、DX導入の必要性を感じている企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、不動産業界でDXを導入するメリットや不動産DXの種類、導入時の注意点について解説します。
目次[非表示]
- 1.不動産DXとは
- 1.1.不動産テックとの違い
- 2.不動産DXが必要とされる理由
- 2.1.長時間労働による人手不足が顕在化
- 2.2.アナログ作業の常態化
- 2.3.顧客ニーズの多様化
- 3.不動産会社がDX推進するメリット
- 3.1.業務効率化による生産性向上
- 3.2.労働環境の改善と人材不足の解消
- 3.3.コスト削減
- 3.4.新たなサービスやビジネスモデルの創出
- 3.5.顧客満足度の向上
- 4.不動産業界におけるDX化の課題
- 4.1.不動産DXに関する知識・ノウハウ不足
- 4.2.不動産DXやITに精通した人員不足
- 4.3.システムの導入にコストがかかる
- 5.不動産業界でのDX例
- 6.不動産DXを進めるポイントと注意点
- 6.1.自社の課題解決に直結するツールから導入する
- 6.2.不動産DXに対応できる人材を確保する
- 6.3.長期的な視点を持つ
- 7.不動産DXを活用して効率的な不動産仲介を実現しよう
不動産DXとは
不動産DXとは、不動産業界がDX導入に取り組むことを指します。「DX」というのは「デジタルトランスフォーメーション」の略称で、デジタルテクノロジーを活用し、業務工程の改善やビジネスモデル自体を変革させることで、市場での競争力を高めるという意味を持ちます。
不動産業界におけるDXには、紙媒体で扱っていた契約書のデジタル化や、オンライン接客の導入などが挙げられます。
急速に変化する現代社会において、不動産業界がさらなる成長を遂げるために、DXの導入によって従来のやり方を見直すことの重要性が増しているのです。
不動産テックとの違い
不動産DXと似た用語に、不動産テックという言葉があります。不動産テックは「不動産」と「テクノロジー」の2つの用語を組み合わせた造語です。最新のテクノロジーを駆使して、アナログ作業が常態化していた不動産業界の課題解決を図りながら、業務改善を目指す意味を持ちます。
つまり、不動産テックとは、不動産DXを推進するために活用されるサービスやシステムということです。
不動産DXが必要とされる理由
不動産業界でDXの推進が必要とされるのには、不動産業界が抱えるさまざまな課題が背景としてあります。ここでは不動産DXが必要とされる理由を、大きく分けて3つ解説します。
長時間労働による人手不足が顕在化
不動産DXが必要とされている大きな理由の1つに、長時間労働による人手不足が慢性化しているということが挙げられます。
令和5年に厚生労働省が公表した「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、不動産業・物品賃貸業の離職率は、令和3年は11.4%、令和4年は13.8%です。他の業界と比較して離職率が高く、多くの人材が流出していることは明らかです。
不動産業界では昔からの慣習などから、非効率的な業務が常態化しているというのが現状です。非効率的な業務は、サービス残業や長時間労働の要因となり、結果的に慢性的な人材不足を引き起こす原因にもなります。
さらに日本全体を見ても、少子高齢化による働き手の減少が顕著であることは周知の事実です。不動産業界における人手不足は今後も進行することが予想されており、DX導入による人手不足の解消は急務といえるのです。
アナログ作業の常態化
不動産業界では、非効率的なアナログ作業が常態化しているため、従業員への負担が大きい上、時代にあった顧客のニーズに対応できていません。
例えば、未だに契約書や重要事項説明書などの作成に紙媒体が活用されていたり、来客と内見時の接客が対面式であったり、古い顧客管理システムを使用していたりする企業が多いのが現状です。このようなアナログ作業によって業務を進めている場合、どうしても多くの人手に頼らざるをえません。
一方顧客は、インターネットやスマートフォンを活用して、物件探しをする人が多い傾向にあります。顧客のニーズに対応するためにも、今までのアナログ作業から抜け出す必要があるといえるでしょう。
顧客ニーズの多様化
急速に時代が変化していく中、顧客ニーズが多様化しているのも不動産DXが必要とされている理由の一つです。
従来、不動産を探す時は、直接店舗を訪れて物件探しをするケースがほとんどでした。しかし、今やインターネットやスマートフォンを利用して、24時間どこでも物件情報を取得できるのが当たり前の時代になりました。
また、ライフスタイルや働き方の変化、建築材料の価格高騰などの影響から、新築物件だけでなく、中古物件やリノベーション物件なども人気を集めています。
こうした多様な顧客ニーズに細かく対応するためにも、マンパワーだけに頼っていたこれまでのやり方から、不動産DXを活用した新しい取り組みをすることが求められているのです。
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不動産会社がDX推進するメリット
不動産会社がDXを推進することで、結果的には売上の向上が期待できます。売上の向上につながるDX推進のメリットを、5つご紹介します。
業務効率化による生産性向上
不動産会社がDXを導入すると、業務全体の効率化と生産性向上が期待できます。デジタル化により、従来のアナログ作業を効率的に進められるようになるためです。
例えば、紙媒体で作成していた書類や顧客リストをデジタル化することで、社内間で簡単に共有できるようになり、管理や更新がスムーズにおこなえるようになります。また、データ入力や書類の作成など、これまで人手に頼っていた作業を自動化することによって、業務の効率が大幅に向上します。
さらに、デジタルツールを使うことで、業務全体の状況をリアルタイムで把握・分析できるため、問題点の早期発見や業務改善が容易になる点もメリットです。
近年では、多くの企業がDX推進を支援する、さまざまなシステムやサービスを提供しています。自社に合ったサポート機能を持つシステムを選ぶことで、人的ミスが大幅に削減され、業務の質の向上も期待できるでしょう。
労働環境の改善と人材不足の解消
不動産DXを推進することで、社内の労働環境が改善され、結果的に離職率の低下や人材不足の解消につながります。
先に解説した通り、不動産業界における慢性的な人材不足は、非効率的な業務や無駄な作業が多いことによる、サービス残業や長時間労働が原因です。
DX導入時には、まずは従来の業務手順を棚卸しし、効率が悪いとされている業務は何か、どこに無駄が発生しているかを把握するところから始まります。
例えば、顧客管理業務や書類作成をデジタル化することで、従業員の手作業の負担を軽減できます。手間のかかる作業から解放されれば、サービス残業や長時間労働をしなくても、顧客に十分なサービスを提供できるようになるでしょう。
このように、不動産DXの導入は高い離職率の原因となっている労働環境を改善し、人材不足の解消を実現してくれます。
コスト削減
顧客データをデジタル化することで、膨大な手作業が減るため、人件費の削減に繋がります。不動産業界における顧客データの管理は、アナログ作業だと多くの手間がかかりますが、デジタル化により効率的に管理できるようになるためです。
また、契約書や重要事項説明書などの書類作成においても、デジタル化を進めることで、コピー用紙代やインク代、書類郵送代などが不要になります。紙の書類がなくなれば、大量の書類を保管するためのスペースが不要になるため、広いオフィスや倉庫分の家賃も削減できるでしょう。
新たなサービスやビジネスモデルの創出
DXを推進することで、従来のアナログ作業や古いシステムから抜け出し、新たなサービスの提供が可能になります。既にチャットボットによる問い合わせ対応や、VR内見などを取り入れている企業もありますが、そうしたより便利で魅力的なサービスを導入できるということです。
さらに、DXを活用して顧客データを蓄積・分析することで、これまでよりも顧客ニーズを把握しやすくなります。多様化する消費者ニーズに対応できる、新たなビジネスが生まれる可能性が高まるでしょう。
他社にはない独自のサービスを提供できるようになれば、売上の向上や企業の成長が期待できるでしょう。
顧客満足度の向上
DXを導入することで、顧客満足度が高まり、結果的に売上と業績の向上が期待できます。
業務プロセスを自動化・可視化するだけでなく、より重要度の高い業務に従業員を配置することで、従業員の知識や営業力が向上します。知識豊富な従業員が直接お客様と接することで、より丁寧で的確な対応ができるため、顧客満足度はさらに高まるでしょう。
また、オンライン上で内見や契約ができるシステムを導入することも、顧客満足度の向上に繋がります。特に、遠方に住んでいる人や仕事で忙しい人にとって、わざわざ不動産会社に足を運ばなくてもいいシステムは非常に便利です。
手軽に使えるツールを導入することで成約率が上がるため、結果的に売上と業績の向上が期待できるのです。
不動産業界におけるDX化の課題
不動産業界でDX推進が推奨されているものの、取り組む中でさまざまな課題に直面する企業も少なくありません。ここでは不動産業界におけるDX化の課題を解説します。
不動産DXに関する知識・ノウハウ不足
不動産業界では、長きにわたってアナログな手法が根付いていた影響から、DXに関する知識とノウハウを備えていない従業員が多いことが課題として挙げられます。
不動産テック7社と全国賃貸住宅新聞がおこなったアンケート調査「不動産業界のDX進状況調査2023」によると、DXに「取り組む予定がない」と回答した企業のうち、26.7%が「取り組み方が分からない」ことが理由としており、その8割が従業員数100人以下の中小企業です。
DXを導入することでどんなメリットがあるのか、導入には何をすべきかが分からず、結局DX化に取り組めていないという企業も少なくありません。不動産会社がDX推進に取り組むためには、デジタル化に関する知識を持った人材が不可欠といえるでしょう。
不動産DXやITに精通した人員不足
不動産DXの推進には、エンジニアやプログラマーなどの専門技術職の人材を確保しなければなりません。DX推進をマネジメントする人材だけでなく、導入後にサービスと業務全体を管理・運営する担当者も必要です。
アナログな業務体系が当たり前だった不動産業界には、ITや不動産DXに精通した人員が少ないため、十分な人数を確保するのが難しいケースもあるでしょう。さらに、従業員が新しいサービス内容や業務の流れを理解するためには、教育する人材も確保しなければなりません。
不動産DXを推進しようと思っても、専門知識のある人員をなかなか確保できずにいる企業も少なくないというのが実情です。
システムの導入にコストがかかる
不動産業界でDXを推進する際、システムの導入に初期費用とランニングコストが発生することも大きな課題として挙げられます。
たとえ多額の費用を投入してシステムを導入しても、うまく活用できなければ意味がありません。結果的にシステムを活用できずに、従来のアナログ手法に戻ってしまった場合、導入費用が無駄になってしまいます。
さらに、システム導入後に発生した不具合やトラブルへの対応や、定期的なメンテナンスにも費用がかかることが想定されるため、長期的な目線で予算組みをすることが重要です。
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不動産業界でのDX例
ひとくちにDXといっても、不動産業界におけるDX推進のためのサービスやツールは多岐に渡ります。ここでは既に多くの不動産会社が取り入れており、業務効率化や顧客満足度向上に直結するDX例を3つご紹介します。
予約システム
内見や来店の予約にかかる手間や時間を大幅にカットしてくれるのが、不動産DXの予約システムです。
従来の予約方法では、顧客は不動産会社の営業時間をチェックし、担当者と日程を合わせて予約を入れるという手間がかかりました。
不動産DXにより予約システムを導入することで、顧客は24時間いつでも予約ができ、急な予定による予約キャンセルや日時変更も、オンライン上で完結できるようになります。
さらに、予約履歴や空き状況の確認もシステムが対応してくれるため、不動産会社側の電話対応の負担が軽減される点も大きなメリットです。
電子契約システム
電子契約システムとは、オンライン上で契約を締結できるシステムです。
2022年5月から書類の電子化が全面解禁となり、不動産売買・賃貸借における契約が全てオンライン上で締結できるようになりました。以前は、法律の関係上、重要事項説明書などの一部書類の電子化が認められていませんでした。これは、不動産業界のDX推進が遅れていた要因の一つともいわれています。
対面での契約が不要な電子契約システムを導入することで、移動時間の手間が省けるだけでなく、遠方の顧客ともオンライン上で契約できるようになります。
web接客ツール
web接客ツールというのは、オンライン上で接客ができるツールのことを指します。不動産業界では、顧客が不動産会社に直接来店し、対面接客を行うのが通常でした。web接客ツールを導入すると、あらゆるシーンにて、オンライン上で顧客と接することが可能になります。
イメージしやすいところだと、オンライン上で顧客からの相談を受けたり、物件の提案をできるようになります。その他にも、VRを活用した内見や、ビデオ通話によるIT重説などを利用する不動産会社も多く見られるようになりました。
web接客ツールを導入することによって、顧客は移動時間の手間がなくなり、自宅からでも気軽に接客が受けられるのです。遠方に住んでいる顧客もターゲットにできるため、売上や業績の向上が期待できるでしょう。
不動産DXを進めるポイントと注意点
さまざまな課題を解決に導いてくれる不動産DXですが、推進するにあたって押さえておきたいポイントと注意点もあります。
自社の課題解決に直結するツールから導入する
不動産DXを推進する際には、日常的に使用頻度が高く、自社の課題解決に直結するツールから導入しましょう。
不動産DXのツールは既に多くの企業によって提供されており、その種類は多岐にわたります。しかし、最初から多機能なものを導入してしまうと、かえって業務が複雑になるリスクがあります。
さらに、発生頻度の低い業務や、売上や成約数の向上に直結しないツールを先に導入してしまうことで、目に見える成果がなかなか得られず、結果的にツールを使わなくなるケースも少なくありません。
不動産DXを推進する際は、まず社内で業務内容を整理し課題を明確することから始め、DX化によって得たい効果や目的をはっきりさせることが重要です。
不動産DXに対応できる人材を確保する
不動産DXを成功させるためには、ITの専門知識や技術を熟知している人材の確保が必要不可欠です。たとえ高機能なツールを導入しても、使いこなせる人材が社内にいなければ、DX化で望んだ効果を得ることはできません。
IT技術に精通した人材を採用したり、デジタルリテラシーの高い若手社員をチームリーダーとして配置したりすると効果的です。店舗数が多い企業では、本店だけでなく各店舗に不動産DX推進役を配置してもいいでしょう。
また、不動産DXツール導入後も、OJTやセミナーへの参加を通して、従業員が常に最新の知識と技術を身に着けられる環境を整えることが大切です。
長期的な視点を持つ
不動産DXを進めていくには、長期的な視点を持つことも大切なポイントです。1年以内などの短期間で成果が出るケースは少なく、5年以上運用して初めて効果が得られるケースも少なくないためです。
業務フローや社内ルールは企業ごとに異なるため、一度に全ての業務に対してDX化を進めるのではなく、取り組みやすいところから少しずつ着手するのがよいでしょう。即効性を求めて、自社に合っていない高機能なシステムを導入すると、使いこなせなくなる恐れもあるため注意が必要です。新しいシステムが社内全体に定着するまでには長い時間を要するということを念頭に、不動産DXに取り組むことが肝心です。
すぐに成果が出ないからといって、途中でDX化をストップさせないように、事前にDX化の成功までのビジョンを立て、目標達成までの具体的な進め方を決めておくとよいでしょう。
不動産DXを活用して効率的な不動産仲介を実現しよう
不動産DXを推進すると、業界で長年課題とされていた業務効率化や人材不足解消などを実現でき、企業全体の業績アップにつなげることが可能です。
特に近年では、オンラインに対する顧客のニーズも高まっているため、気軽に問い合わせや物件情報の閲覧、内見などができるツールを導入することで、顧客の満足度のアップも期待できるでしょう。
Faciloは、顧客情報や提案物件、内見予約などを一括管理できる、不動産DXのプラットフォームです。顧客データや顧客の希望条件を分析することで、これまで多くの時間と労力が必要とされていた物件提案を、スムーズかつ的確におこなえる点を評価頂いています。
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