【不動産業界×AI】業務効率化と顧客満足度アップを実現する活用事例
「ChatGPT」をはじめとして、生活の中で頻繁に見聞きするようになったAI技術。不動産業界でも、業務効率化や生産性の向上を目的にAIを導入する企業が増えてきています。まだ導入には至っていなくても、今後導入を検討しているという不動産会社も多いのではないでしょうか。
この記事では、不動産業界においてAIを導入することによるメリット・デメリット、導入時の注意点などを解説します。不動産業界におけるAI導入事例も紹介するので、今後導入を検討する際の参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.AIとは?
- 1.1.不動産業界におけるAIとは?
- 2.現在の不動産業界が抱える課題
- 2.1.少子高齢化による不動産需要の変化
- 2.2.膨大な物件データ
- 2.3.人材不足の深刻化
- 2.4.価格設定の難しさ
- 2.5.仲介業務における物件提案の非効率性
- 3.不動産業界でAIを導入するメリット
- 3.1.業務効率と生産性がアップする
- 3.2.顧客満足度が向上する
- 3.3.新サービスで他社と差別化できる
- 4.不動産業界でAIを導入するデメリット
- 4.1.AIの導入・維持にコストがかかる
- 4.2.顧客の感情や状況に寄り添ったアプローチが難しい
- 4.3.AIを活用できる人材が必要
- 5.不動産業界におけるAI導入事例
- 5.1.不動産価格や賃料の査定
- 5.2.顧客ニーズに合わせた物件提案
- 5.3.問い合わせ対応の自動化
- 5.4.顧客データ管理の効率化
- 5.5.顔認証を活用したスムーズな内見対応
- 6.不動産業界でAIツールを導入する際のポイント
- 6.1.AIツール導入の目的を明確にする
- 6.2.AIに精通した人材を確保・育成する
- 7.AIを活用して不動産業務の効率化と顧客満足度向上を実現しよう
AIとは?
AI(Artificial Intelligence:人工知能)とは、人間の脳で行われている処理を人工的に再現することにより、人間のように学び、人間のように作業できるコンピュータープログラムのことをいいます。
現在のAIは「機械学習」をメインとしており、蓄積された大量のデータを分析することにより一定のパターンを学習します。このパターンをベースとして新たなコンテンツを作成するため、AI自身でまったく新たなものを一から生み出せるわけではありません。
不動産業界におけるAIとは?
AIは、過去から現在に至るまで蓄積した大量のデータをスピーディーに分析し、分析結果をもとに予測することを得意としています。これにより、従来人の手で行っていた分析業務や入力業務の自動化、ビッグデータの解析などに役立てることが可能です。
不動産業界も膨大な量の取引データや顧客データを取り扱うため、幅広くAIを活用できる可能性があります。代表的な活用例としては、膨大なデータから顧客ごとのニーズに合わせた物件を提案するツール、過去の取引事例をベースに価格査定を行うツールなどが挙げられるでしょう。
現在の不動産業界が抱える課題
不動産業界でAIの導入が広まりつつある背景には、現在の業界が抱える5つの課題があります。
少子高齢化による不動産需要の変化
不動産業界が抱える課題の中でも、特に深刻なのが少子高齢化による不動産ニーズの変化です。日本では少子高齢化の進行により、既に人口減少社会に突入していることは多くの人が認識しているでしょう。しかし、2024年現在、世帯数に関しては依然として増加しています。
これは、未婚率の上昇や高齢化の進展により、一人暮らしの世帯が増えているから。人口が減少していても世帯数は増えているので、都市部などではまだ一定の住宅ニーズを見込める状況です。
しかし、国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、世帯数も2030年をピークに減少へ転じると見られています。世帯数が減少すれば、都市部も含めて不動産市場が縮小することが予想されるため、他社と差別化しないと顧客を獲得できなくなるでしょう。
膨大な物件データ
不動産は1つとして同じものがなく、物件ごとに面積、価格、賃料、間取り、駅距離など膨大な量のデータを管理しなければなりません。営業担当者全員が自社で取り扱う物件のデータを全て把握していればよいものの、人間の能力には限界があり不可能です。
自社の取り扱う物件のなかから、顧客が希望する条件と照らし合わせて最適な物件を紹介する必要がありますが、経験や勘だけでは十分な対応はできません。そのため、蓄積された膨大な情報を最大限活用し、顧客の希望条件に合わせた物件を提案できる仕組みが求められます。
人材不足の深刻化
人口減少によって減るのは顧客だけではありません。人口減少社会の日本では、あらゆる業界で労働力不足が指摘されており、不動産業界も例外なく人材不足に陥ることが予想されています。かつて「不動産屋は足で稼ぐ」といわれていましたが、人材不足が深刻化する中では、貴重な人材をいかに効率的かつ適正に配置するかが肝であり、細かな事務作業などに労働力を割くのは難しいケースもあります。
今後の不動産業界で生き残っていくためには、これまでマンパワーでやっていた業務を効率化したり自動化したりして、人手不足でも対応できる環境を整備していく必要があります。
価格設定の難しさ
先ほども紹介したように、不動産は1つとして同じものがありません。同じように見えるアパートやマンションの一室であっても、フロアや間取りが違えば生活環境が大きく変わってきます。また、売却や賃貸のタイミングによっても、適正な価格は変動するでしょう。
さらに、不動産は「一物五価」といわれるように、評価の仕方によって同じ物件でも価格が異なります。通常の一物一価の製品と性質が異なるため、さまざまな要因を照らし合わせながら、適切な価格を決めなければなりません。こうした価格設定の難しさも、不動産業界でITによる自動化がなかなか進んでこなかった理由の一つです。
仲介業務における物件提案の非効率性
不動産仲介業務においては、顧客の希望条件に当てはまる物件を提案しようにも、検索で選び出される候補の数が膨大で、選ぶのも大変といったケースも少なくありません。数多くの候補のなかから少しずつ条件を絞っていくという、非効率的な仲介業務が常態化しているのです。
顧客の立場から見ても、仲介業界のWebサイト、物件検索サイト、実店舗など、調べる所によって提案される物件が異なるので、どれが自分に適した住まいなのか悩んでしまうことでしょう。
仲介業務を効率化するには、一元化した物件情報と蓄積した顧客情報を掛け合わせ、最適な物件をスピーディに提案できるシステムが求められます。
不動産業界でAIを導入するメリット
不動産業界でAIを導入すれば、上記の業界が抱える課題を解決できる可能性があります。ここでは、AI導入によって得られるメリットを3つ紹介しましょう。
業務効率と生産性がアップする
これまで人手で行ってきた単純作業やルーティンワークをAIに任せれば、業務の効率化を図れます。例えば、契約書を定型化してAIに作成させる、問い合わせ窓口やメールの自動返信をAIに任せる、といった内容が考えられるでしょう。
AIに任せることにより生じた余剰な人手を、さらなる売上アップや効率アップにつながる業務に振り分ければ、少子高齢化によって起きる不動産需要の低迷に適応することが可能です。また、少ない人員でも業務を回せるようになるので、人口減少による労働力不足にも対応できます。
定型業務や集計、データ管理など事務作業を自動化することで、人件費の大幅削減も実現できるでしょう。
顧客満足度が向上する
不動産業界でAIを導入すると、2つの側面から顧客満足度の向上が期待できます。
1つは、問い合わせ対応やメール返信の一次窓口をAIに任せると、24時間365日迅速な対応が可能になることです。AIでも対応できる簡単な内容であれば、その場で顧客に回答できます。加えて、AI査定などを導入した場合、高い精度での予測や分析をスピーディーに行うことができ、顧客満足度の向上につながるでしょう。
もう1つは、AIによる業務効率化によって人間の業務に余裕が生まれ、人対人の丁寧なおもてなしを提供できることです。個別のニーズに合わせた物件情報、一人ひとりのライフスタイルに寄り添ったサービスを提供できるようになり、顧客からの信頼獲得や高評価につながる可能性があります。
新サービスで他社と差別化できる
AIの技術向上やアイデア次第では、これまで想像もつかなかったような新サービスを開発できるチャンスもあります。現段階では、不動産業界でAIを活用している事例はそれほど多くはありません。それだけに他社との強力な差別化につながるでしょう。
AIを用いた画期的なサービスの例としては、AIがコンシェルジュとなって案内する不動産仲介サービス、オンライン上で現地にいるかのような感覚が得られる物件のバーチャルツアーなどが考えられます。
こうした新サービスの開発によって、従来改善が難しかった業務に関しても、さらなる効率化が期待できます。
不動産業界でAIを導入するデメリット
不動産業界にとってメリットの多いAIの導入ですが、一方で次に挙げるデメリットが存在することも認識しておきましょう。
AIの導入・維持にコストがかかる
当然ながら、AIを導入するためには一定の初期費用がかかります。革新的なサービスを導入したいと考える場合には、開発費用も考慮しなければなりません。また、AI技術の進歩は目覚ましく、導入しただけではすぐに陳腐化してしまいます。常に最新技術にアップデートし続けるための維持コストもかかるでしょう。
プログラムのトラブルなど不測の事態が発生した場合には、想定していなかった修繕や回復のための費用も必要となります。このようなコストをかけてでも、投資する価値があるかどうかは慎重な判断が必要です。
顧客の感情や状況に寄り添ったアプローチが難しい
AIは過去のデータの蓄積をもとに機械的な判断をするだけなので、顧客一人ひとりの感情や状況に寄り添った「人間味のある」アプローチには向いていません。
住まいに対する希望条件には、細かな優先度や周辺環境に対する印象など、多分に個人の考えや価値観が含まれます。人と人との対話の中で確認していく必要があり、AIの判断では拾いきれない要素も出てくるでしょう。
顧客の思いに寄り添った満足度の高いサービスを提供するには、どうしても人対人のコミュニケーションが求められるため、完全にAIに頼った業務の遂行は困難です。
AIを活用できる人材が必要
業務の効率化につながるAIの導入ですが、そもそもAIを活用できる人材が社内にいなければ、業務の自動化を進めることはできません。不動産業界はアナログな体制が根強く残っており、パソコンの扱いすら慣れていない社員もいる可能性があります。AIを活用できそうな人材が社内にいないのであれば、AI導入に先んじてデジタル人材の確保を検討しましょう。
AI導入によって従来業務の形が大きく変わるため、社内説明会や研修を行い、AIに対する既存社員の心理的ハードルを下げることも大切です。
不動産業界におけるAI導入事例
不動産業界では、既にAI導入で業務効率化を達成している企業もあります。ここでは5つの事例を紹介します。
不動産価格や賃料の査定
近年不動産業界で増えているのが、AIを活用した物件価格や賃料の無料査定サービスです。
不動産の価格は、物件の築年数や駅からの距離、面積、周辺環境、利便性などの条件、周辺相場など、さまざまな要素によって決まります。実績データをAIに学習させておけば、相場や地域環境、物件の特徴を加味した適正価格を短時間で算出でき、机上査定にかかる手間を節減できます。
ただし、査定の精度を高めるには、AIになるべく多くの事例を学習させることが必要です。また、AIによる査定はあくまでも参考価格を知るためのものであり、最終的には人手を使った訪問査定が求められます。
顧客ニーズに合わせた物件提案
物件を案内する際には、担当者が顧客から聞き出した希望条件をもとに物件情報を照合し、顧客に説明しながら要望に合う物件を絞り込んでいく必要があります。要望に合う物件が見つからなければ、さらにヒアリングをして物件を探し直すという作業を繰り返さなければなりません。
一方、AIなら顧客ごとのデータを蓄積して活用することが可能。顧客が自ら入力した希望条件をベースに検索できるので、要望に合った物件を効率的に提案できます。入力情報はデータベースに蓄積されるため、使われるほどに精度が高まっていくのもポイントです。
問い合わせ対応の自動化
AIを搭載したチャットボットや音声アシスタントを活用すれば、顧客の問い合わせに対する一次対応を自動化できます。24時間365日、顧客から寄せられた質問に対して、リアルタイムで正確に返答できるため、顧客サービスの質を向上させることが可能です。
さらに、自動化によって電話対応やメール対応が減り、社員の業務負担軽減にも効果が期待できます。軽減分を他の業務に充てられれば、より顧客満足度の高い対面サービスの提供が可能になり、サービス向上の好循環が生まれるでしょう。
顧客データ管理の効率化
不動産仲介業務における従来の顧客データ管理では、顧客が紙に記入した情報をパソコンに入力しなければなりませんでした。この方法だと、入力する手間がかかる上に入力ミスのリスクも高くなります。
AIを導入すれば、紙に書いた情報を画像として読み取り、自動的にデータ化することが可能です。瞬時にデータ化された顧客情報を一括管理・蓄積しておけば、AI査定や顧客に合わせた物件提案にも活用できます。担当者による情報入力のスピードがアップし、より早く社内で最新情報を共有できるようになるのもメリットです。
顔認証を活用したスムーズな内見対応
「内見対応にかかる時間をどうにかしたい」と考えている不動産仲介会社も少なくないでしょう。通常の内見は営業担当者が付き添わなければならず、複数の物件を回るためには数時間単位で業務時間を割く必要があります。
そこでおすすめなのが、AIによる顔認証を活用した内見の自動化です。内見に対応する物件に顔認証システムを設置すれば、営業担当者が現場に足を運ぶことなく、顧客だけ内見できるようになります。
お互いの時間を調整する必要もなくなるので、顧客にとっての利便性も向上するでしょう。
不動産業界でAIツールを導入する際のポイント
最後に、不動産業界でAIを導入するにあたって押さえておきたいポイントを解説します。
AIツール導入の目的を明確にする
1つ目のポイントは、AIツールをなぜ導入するのかという目的を明確にすることです。
先述の通り、不動産業界におけるAIの活用方法は多岐にわたり、選択するツールによって解決できる課題が異なります。単にAIを活用したいというだけでは、思っていた効果を得られないおそれもあります。AIツールの導入にはコストも時間もかかるため、導入によって解決したい課題を洗い出し、課題解決につながるAIツールを検討しましょう。
例えば、顧客情報の管理が煩雑で上手に活用できていないことを課題としているなら、顧客情報管理に特化したAIツールの導入を検討するのがおすすめ。顧客からの問い合わせに対する一次対応の効率化を図りたい場合には、AIチャットボットやメールの自動返信ツールなどの導入を検討するのが得策です。
AIに精通した人材を確保・育成する
2つ目のポイントは、AIツールを活用できるだけのデジタル人材を確保することです。
AIの運用には、高度なプログラミング技術や数学、統計学に関する知識が求められます。せっかくAIツールやアプリを導入しても、活用できる専門的な人材がいなければ、宝の持ち腐れになってしまうでしょう。デジタル人材を社内で育成するのが難しいようなら、新たに人材を採用する必要があります。
ただし、AIに精通した人材はあらゆる業界でニーズが高く、獲得競争が激しい状況。優秀な人材を確保するには、いち早く動きだすことが大切です。
よりAIを効率的に活用するためには、各店舗や部署ごとにAIを扱える人材を配置することも求められます。他社との差別化を図るためにも、人員数や人員配置の適正化を図りましょう。
AIを活用して不動産業務の効率化と顧客満足度向上を実現しよう
IT化の遅れが指摘される不動産業界でも、徐々にAIを取り入れて業務効率化を実現する企業が出てきています。AIツールやAIアプリを上手に活用すれば、業務効率化だけでなく顧客満足度の向上につながる可能性もあります。
一方でAIツールの導入や維持には大きな費用がかかるため、AI導入の目的を明確にすると共に、ツールを効果的に活用できるデジタル人材を確保することが大切です。
Facilo(ファシロ)は不動産仲介業務で煩雑になりがちな、物件提案・内見予約・顧客管理などを効率化する不動産AIのプラットフォームです。物件提案における物だし、帯替えをAIで簡略化したり、顧客ごとの見込み度合いをAIが分析してスコアリングします。ぜひ資料をダウンロードしていただき、少子高齢化をはじめとする社会課題に立ち向かいながら、自社の顧客満足度や業績のアップにお役立てくだされば幸いです。