不動産DXツールの種類や機能、導入方法を解説

不動産業界では、長らく紙や対面でのやり取りが中心でした。しかし、近年はデジタル技術を活用して業務を変える「不動産DX」が注目されています。

顧客ニーズの多様化や人手不足が進む中で、業務効率化と生産性向上は企業の成長に欠かせません。とはいえ「DXという言葉は聞くけれど、自社にはどのようなツールが役立つのか分からない」と感じている経営者や担当者も多いでしょう。

この記事では、不動産DXを実現する代表的なツールの種類や機能、導入の流れを分かりやすく解説します。物件管理から顧客対応、契約業務まで効率化できるツールを理解することで、自社の課題に合った選択肢を見つけられます。

目次[非表示]

  1. 1. 不動産DXツールとは?
  2. 2. 不動産DXツールの種類
  3. 3. 不動産DXツールを選ぶポイント
  4. 4. 不動産DXツールの導入方法
  5. 5. 不動産DXツールに関するよくある質問
  6. 6. 不動産DXツールを活用して業務効率化を進めよう

1. 不動産DXツールとは?

不動産DXツールとは、これまで紙や対面で行ってきた不動産の業務をデジタル化し、作業の効率化と自動化を進めるためのシステムです。

物件情報の管理、顧客とのやり取り、内見案内、契約手続きといった流れをオンラインで完結し、データにもとづいた判断をサポートします。

たとえばクラウドを使えば、場所や時間を問わず情報共有が可能になり、社内の連携がスムーズになるでしょう。さらにAI搭載ツールなら、膨大なデータを分析して顧客に合った物件を提案できます。

単なるデジタル化にとどまらず、業務のムダを減らして効率を高めたり、顧客対応の質を向上させたりすることも可能です。その結果、成約率アップやリピーター獲得といった成果につながり、新しいサービスと収益源を生み出すチャンスも広がります。

2. 不動産DXツールの種類

不動産DXツールには多くの種類があります。ここでは、代表的な11種類のツールについて、主な特徴と機能を解説しましょう。

不動産管理

不動産管理ツールは、賃貸・売買物件の情報、入居者やオーナーの基本情報、契約内容、入出金などを一元管理するシステムです。

・物件管理
・契約管理
・顧客管理
・入出金管理
・メンテナンス管理

Excelや紙のファイルで行われていた管理業務をデジタル化することで、作業時間と入力ミスを減らせます。

一度の登録で複数の不動産ポータルサイトへ一括で掲載できる機能や、家賃の入金状況を自動で確認し遅延があればアラートを出す機能などが一例です。

クラウド型のツールを使えば、社内外から安全にアクセスでき、情報共有もスムーズになります。これにより、担当者は煩雑な手作業から解放され、より付加価値の高い業務に集中できるでしょう。不動産管理の効率化を進めるうえで頼れる仕組みです。

CRM・SFA(顧客管理/営業支援)

CRM(顧客管理)は、次のような顧客とのやり取りを記録して共有するツールを指します。

・問い合わせ
・物件提案
・内見
・契約
・アフターフォロー

すべての履歴をデータとして残せるため、営業担当者が変わっても同じ情報にもとづいて対応でき、抜け漏れを防げるのがメリットです。

また、顧客が閲覧した物件や問い合わせ内容といった行動履歴を分析し、関心が高いタイミングで案内メールを自動送信することも可能。データにもとづいて、パーソナライズされた戦略的な営業アプローチ(データドリブン営業)を実現します。

SFA(営業支援)は、管理機能に特化し、営業活動そのものを効率化するためのツールです。

・案件管理
・スケジュール管理
・タスクの進捗管理

これまで個人の経験や手帳に頼っていた営業管理を記録・可視化することで、担当者に依存しない体制をつくります。情報を共有して属人化を抑え、チーム全体の営業力を底上げできるでしょう。

スマートフォンやタブレットからも更新できるため、外出先でも最新情報にアクセスできます。

電子契約・電子署名

電子契約・電子署名ツールは、不動産の売買や賃貸に関する書類を作成から保管までオンラインにて行うシステムです。

・書類の作成
・送信
・本人確認
・電子署名
・タイムスタンプ

2022年5月の宅地建物取引業法改正により、重要事項説明書を含む多くの書類の電子化が全面的に解禁されました。それに伴い、導入する企業が増えています。

このツールを使えば、契約書を印刷・製本し、郵送するといった手間が一切不要に。遠方の顧客ともスピーディに契約手続きを進められるため、機会損失を防ぎ、顧客満足度の向上にもつながります。

契約書は電子データとしてクラウド上に安全な形で保管されるため、物理的な保管スペースが不要になるでしょう。さらに、印紙税や郵送費といったコストも削減できる大きなメリットがあります。

予約システム

予約システムは、顧客がWeb上で手軽に予約できるツールです。不動産業界では、内見や契約、物件確認など日程調整の必要な場面が多くあります。

自社サイトや物件ページに予約システムを組み込めば、顧客は24時間いつでも空き状況を確認し、その場で都合のよい日時を選べるでしょう。

営業担当者のカレンダーと自動連携して二重予約を防止でき、前日には確認メールの自動送信も可能です。電話やメールでの面倒な日程調整が減り、予約の取りこぼしを防げるため、内見数や成約率のアップにもつながります。

VR・バーチャル内見

VR(バーチャルリアリティ)を使ったバーチャル内見は、現地に行かなくてもスマートフォンやPCで室内を360度見学できるサービスです。コロナ禍以降、非対面での接客ニーズが高まり、多くの不動産会社で導入が進んでいます。

利用者は時間や場所の制約を受けず、気になる物件を複数まとめて確認可能です。写真では分かりにくい広さや動線もその場で把握でき、比較検討の効率が大きく上がります。

不動産会社側は、案内や移動の負担を抑えつつ、遠方の顧客や成約見込みの高い層を絞り込みやすくなるのが利点です。

家具配置のCGで入居後の生活イメージを伝えるなど、魅せ方の工夫もしやすく、成約までの時間短縮を期待できます。

物件査定

物件査定ツールは、AIやビッグデータを活用して、不動産の売却価格や賃料を迅速かつ客観的に算出するシステムです。

周辺の類似物件に伴う取引事例や市場の動向、物件の特性といった膨大な情報をもとに、わずか数分で精度の高い査定結果を提示します。

これまでは担当者の経験や勘に頼る部分が大きく、査定額にばらつきが出がちでした。このツールを使えば、経験の浅い営業担当者でも根拠にもとづいた説得力のある査定額を顧客に提示できます。

これは、顧客からの信頼獲得にもつながり、媒介契約の獲得率向上に大きく寄与します。

オンライン会議

オンライン会議ツールは、ZoomやMicrosoft Teamsなどのビデオ通話システムです。不動産業界では、顧客との商談や物件説明、さらに法律で必要な重要事項説明にも使われています。

顧客は店舗へ行かずに、自宅など好きな場所から相談でき、安心してやり取りが可能です。画面共有を使えば、資料や図面を見ながら説明できるため、遠隔でも対面と同じように話を進められます。

さらに、予約やスケジュール管理の機能を備えたツールなら、予定を調整しやすく、接客の回数と質を高められるでしょう。

チャット・コミュニケーション

チャット・コミュニケーションツールは、LINEや専用アプリを使って顧客と手軽にやり取りできる手段です。業務用としては、Chatwork(チャットワーク)やSlack(スラック)などがよく使われています。

電話やメールより気軽に質問を受け付けられるため、顧客との接点が増え、信頼を築きやすくなるのがメリットです。たとえば、内見の日程調整、物件のちょっとした疑問への回答、新着物件の案内などを即時に共有可能で、対応の速さが伝わります。

チャットボット

チャットボットとは、LINEなどのチャット上や自社サイトで、よくある質問に自動で答える仕組みです。夜間や休日でも簡単な問い合わせに自動で対応できるので、顧客満足度を高めつつ従業員の負担を減らせます。

やり取りの履歴も一元管理されるため、担当者間での情報共有をスムーズに行えることも大きなメリットです。

電話自動応答サービス

不動産業界では、問い合わせや電話のやり取りが多く発生します。メールフォームとチャットツールを導入しても、デジタルに不慣れなシニア層からは、依然として電話での問い合わせが多いのが実情です。

そのため、電話対応に追われて業務が止まったり、口頭でのやり取りゆえに聞き間違いが起こったりするといった課題が生じます。

こうした課題には、電話自動応答サービスの導入が効果的です。内見予約や簡単な問い合わせは自動音声で対応し、必要に応じて担当者につなげます。

また、予約ページへの誘導や受電内容の自動メモ機能を備えたサービスもあり、情報をデータとして残せるため、記録漏れの心配もありません。さらに、営業時間外でも対応可能なので、電話業務の効率化と顧客満足度の向上が期待できます。

入居者/オーナー向けポータル・アプリ

入居者/オーナー向けポータル・アプリは、入居者や物件オーナーとのやり取りをスムーズにし、満足度を高めるための専用サイトおよびスマホアプリです。

これまで電話や郵送で行っていた連絡と手続きをオンライン化することで、双方の利便性が向上するでしょう。

入居者はアプリから契約内容の確認、賃料や明細の閲覧、契約更新、設備トラブルの報告などを行えます。管理会社はオーナー向けアプリと連携し、入居者からの報告をそのままオーナーに共有可能です。

これにより、問い合わせ対応の手間を減らし、情報の透明性を高めることで、長期的な信頼関係づくりにもつながります。

3. 不動産DXツールを選ぶポイント

最適な不動産DXツールを選ぶには、機能、使いやすさ、費用、サポート体制などを総合的に比べることが重要です。

ここでは、ツール選定で失敗しないための5つのポイントを紹介します。

・必要な機能が揃っているか
・従業員が使いやすい設計か
・複数端末と連携できるか
・予算と費用対効果のバランスはよいか
・サポート体制は十分か

必要な機能が揃っているか

不動産DXツールは、自社の課題を解決できる機能を備えていることが前提です。

まず自社の業務の流れを洗い出し、解決したい課題を明確にします。物件情報や顧客情報の管理、電子契約、オンライン相談など、必要な機能をリスト化し、重要度に応じて優先順位をつけましょう。

多機能なツールは魅力的ですが、使わない機能はコストを圧迫するだけです。自社の成長に合わせて機能追加ができるかも確認し、過不足のないツールを選んでください。

従業員が使いやすい設計か

どんなに優れたツールでも、現場が「使いにくい」と感じれば定着しません。特に不動産業界はITに不慣れな従業員も多いため、以下の点を確認しましょう。

・誰でも直感的に操作できるデザイン(UI/UX)か
・画面構成や操作手順が分かりやすいか
・必要な情報にすぐアクセスできるか
・日常の業務フローにスムーズに組み込めるか

導入前に無料トライアルやデモンストレーションを積極的に活用し、複数の従業員に実際に触れてもらうことをおすすめします。現場の声を取り入れ、誰もがストレスなく使えるツールかどうか、確認してください。

複数端末と連携できるか

外出中の営業担当者がスマートフォンで顧客情報を確認したり、在宅勤務の社員が自宅のPCで契約状況を更新したりと、現代の多様な働き方に対応できるかは重要な選定ポイントです。

PCだけでなく、スマートフォンやタブレットでも同じ操作感で使えるマルチデバイス対応は必須といえるでしょう。

特にクラウド型のツールなら、ネット環境があれば時間や場所を問わず最新データにアクセスできます。情報をリアルタイムで共有でき、移動や待ち時間も有効に使えるため、業務効率と柔軟性が大きく向上するのがメリットです。

予算と費用対効果のバランスはよいか

ツールの導入には、初期費用に加え、月額利用料や保守費用といったランニングコストも発生します。価格の安さだけで選ばず、投じた費用に対してどれだけ成果が見込めるかという「費用対効果」の視点で見極めてください。

たとえば、月額5万円の不動産DXツールで、これまで2人の従業員が10時間かけていた作業が自動化されるとします。その時間を営業活動に回して成約数を増やせれば、費用対効果は高いといえるでしょう。

削減できるコストと新たに見込める売上を数値で試算し、予算内で効果が最大になるツールを選定します。契約前に料金体系や追加オプションの有無も細かく確認し、運用開始後の総負担を見通しておくのがおすすめです。

サポート体制は十分か

ツールの導入でつまずきやすいのが、初期設定、既存システムからのデータ移行、そして導入後の定着となります。特にDXに不慣れな企業は、相談しやすいサポート体制が不可欠です。サポート体制に関しては、次の点を事前に確認しましょう。

・問題が発生した際に、電話・メール・チャットなどの相談窓口があるか
・対応は迅速か
・専任の担当者が継続して対応してくれるか

必要なのは、操作説明だけではありません。業界の状況をふまえた活用提案、定期の勉強会、個別の助言など、運用を後押しする体制があると安心です。

サポートが有料オプションの場合もあるため、契約前にサービス内容と範囲、費用を細かく確認しておきましょう。

4. 不動産DXツールの導入方法

不動産DXツールは、流行で選ばず、自社の計画に沿って導入します。目的と手順を明確にし、社内で合意を得ながら段階的に進めることが大切です。大まかな流れは次の通りとなります。

  1. 自社の課題とツール導入の目的を明確にする
  2. 課題や目的に対して必要な機能を整理する
  3. 条件を満たす不動産DXツールを比較・選定する
  4. 操作感・機能性・費用のバランスを検証し、導入計画に落とし込む
  5. 従業員に周知し、導入する

具体的な導入手順は、こちらの記事で分かりやすく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
不動産DX導入ガイド|メリット、ポイント、注意点も解説

5. 不動産DXツールに関するよくある質問

ここでは、不動産DXツールに関するよくある質問を紹介します。

Q1. 不動産DXツールの導入効果はどのくらいで感じられますか?
Q2. ITに詳しくない従業員でも使いこなせますか?
Q3. 導入費用はどのくらいかかりますか?
Q4. どのような機能があるツールを選べばよいですか?
Q5. 小規模な不動産会社でも導入は可能ですか?

Q1. 不動産DXツールの導入効果はどのくらいで感じられますか?
A1. ツールの導入効果を実感するまでには、早ければ1か月、遅ければ1年程度かかることがあります。ツールはあくまで業務を支援するものであり、従業員がその操作に慣れ、機能を最大限に活用できるまでには一定の学習期間が必要です。

長期的な視点を持ち、継続的な研修や運用ルールの改善に取り組むことで、徐々に生産性の向上や成約率アップといった目に見える成果につながっていきます。

Q2. ITに詳しくない従業員でも使いこなせますか?
A2. 多くの不動産DXツールは、ITの専門知識がない人でも直感的に操作できるよう、分かりやすいインターフェースで設計されています。

しかし、従業員の中には新しいシステムに対して抵抗感を抱く人もいるかもしれません。

導入初期は操作方法に関する質問が頻発することを見越して、気軽に相談できる担当者を決めたり、提供元のサポートデスクを活用したりする体制を整えておくとよいでしょう。

Q3. 導入費用はどのくらいかかりますか?
A3. 金額はツールの種類・機能・利用人数で変わります。

一般的に、クラウド型のサービスが多く、初期費用は数万円から数十万円、月額費用は数千円から数万円程度が目安です。多機能な統合システムになるほど高額になる傾向にありますが、必要な機能だけを選べる低コストのプランも増えています。

さらに、国や地方自治体が提供する「IT導入補助金」を利用できるケースもあります。対象条件や申請の流れは、ツール提供会社に相談してみましょう。

Q4. どのような機能があるツールを選べばよいですか?
A4. 自社の課題解決ができる機能があるツール選びましょう。たとえば、顧客対応を効率化したい場合は、問い合わせや内見後のフォローを自動化できるチャット対応機能・タスク管理機能が役立ちます。

契約業務をスピードアップしたいなら、電子申込や電子契約に対応した機能を使えば、書類作成と郵送の手間を省き、契約までの時間を短縮できます。

さらに提案の質を高めたい場合は、AIによる顧客ニーズの把握やデータ分析の活用がおすすめです。興味関心に合わせた案内を行うことで、成約率アップが期待できます。

Q5. 小規模な不動産会社でも導入は可能ですか?
A5. 大手企業だけではなく、小規模な不動産会社でもDX導入は十分可能です。現在はクラウド型ツールが主流であり、自社でサーバーを用意せずに始められるので、初期費用を抑えられます。

また、利用人数や機能を必要に応じて追加できるサービスも多いため、小規模からスタートし、事業の成長に合わせて機能を広げることも可能です。

6. 不動産DXツールを活用して業務効率化を進めよう

不動産DXツールには、不動産管理、CRM・SFA、電子契約、VR内見など、さまざまな機能があり、現場の幅広い作業を効率化できます。ムダな手作業を減らし、情報の更新や共有を素早く行えるため、働き方の見直しを進められるのがメリットです。

購入検討者にとっても、内見や手続きが便利になり、満足度の向上につながるでしょう。その結果、反響数や成約率アップも期待できます。

不動産コミュニケーションクラウド「Facilo(ファシロ)」は、物件提案や顧客管理といった仲介業務を一つにまとめ、顧客体験の向上を促すツールです。

導入企業では、作業時間の短縮に加え、データにもとづく提案で成約率が上がり、顧客との新しい関係づくりも実現しています。現場の流れに合わせて使える設計で、運用の定着も図りやすいのが特徴です。

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